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プロテインは運動後30分以内に飲まないと損? 「ゴールデンタイム」を研究で確かめると

運動後30分以内の「ゴールデンタイム」を逃すと損をする、という根拠は出ていません。筋肉を大きくする効果(筋肥大)で大切なのは、飲む時刻より1日のたんぱく質の量です。目的・年齢別の考え方も紹介します。

#たんぱく質#プロテイン#筋トレ#高齢者

記事タイプ
通説を確かめる
研究デザイン
Schoenfeld ら 2013 はランダム化比較試験を集めたメタ解析(複数の実験の結果をまとめて分析した研究)。筋力の分析は20件・478人、筋肥大の分析は23件・525人。Morton ら 2018 も、運動期間6週間以上のランダム化比較試験を集めたメタ解析(49件・1863人)。ISSN の文書は学会の見解(ポジションスタンド)で、文献の検討にもとづく
対象者
Morton 2018 は健康な成人。Schoenfeld 2013 の年齢・性別・トレーニング歴の内訳は、要旨からは確認できていない。Morton 2018 は、年齢が高いほどたんぱく質を足したときの除脂肪量の増え方が小さく、トレーニング経験者のほうが大きいと報告している
限界
Schoenfeld 2013 の対象者の「健康な成人」という記述は要旨では確認できていない。著者所属は要旨で確認できたのが第一著者(ニューヨーク市立大学リーマン校)のみ。Schoenfeld 2013 は、運動の前後1時間以内に取ったグループと、前後2時間は取らなかったグループの比較(本文の定義で確認)。30分と1時間を分けて比べた分析ではない。ISSN の文書の著者所属には、栄養補助食品の会社が含まれている(Europe PMC の所属表記)。1回の量と回数、高齢者への当てはめは、運動をしている健康な成人の研究と見解が中心

「運動後30分以内はゴールデンタイム。そのあいだにプロテインを飲まないと損をする」と聞いて、運動のあとにあわてて飲んでいる人は多いはずです。

この記事では、**運動後すぐに飲むかどうか(飲むタイミング)**と、1日に取るたんぱく質の合計量を分けて書きます。プロテインは、粉末のたんぱく質を水や牛乳で飲むもので、中身は食事に含まれるたんぱく質と同じです。筋肉を大きくする効果(筋肥大)と、持ち上げる力(筋力)が、どちらで決まるのかを確かめます。

結論から言うと、30分以内を逃すと損をする、という根拠は出ていません。筋肥大で大切なのは、飲む時刻より1日の合計量でした。筋力も、飲む時刻で差は出ませんでした。

よく言われていること

運動後30分以内は「ゴールデンタイム」で、早く飲むほど筋肉がつく。この考えは、ジムや動画で広く言われています。研究者の間でも、トレーニングの前後にたんぱく質を取ることが大切だという考えは、広く信じられてきました。[1]

運動のあとしばらくは、筋肉がたんぱく質を取り込みやすい時間だと言われます。そのため、「その時間内に飲まないともったいない」と思われやすいのです。

研究で確かめる

アメリカのニューヨーク市立大学リーマン校の研究者を含むチームは2013年、飲むタイミングを比べた研究をまとめて分析しました。[1] 集めたのは、トレーニングの前後1時間以内にたんぱく質を取るグループと、前後2時間は取らないグループを、くじ引きのように振り分けて比べた実験(ランダム化比較試験)です。30分以内に飲む人も、前者のグループに含まれます。筋力は20件・478人分、筋肥大は23件・525人分でした。

最初に、飲み方の違いだけを単純に並べると、前後に取ったグループのほうが、筋肥大で小さい〜中くらいの差で上でした。ただし、実験ごとの条件の違い(特に1日の合計量)をそろえて分析し直すと、筋肥大も筋力も、2つのグループの差は見えなくなりました。筋肥大では、飲むタイミングより1日の合計量のほうが、差をよく説明していました。[1]

つまり、前後に飲んだグループが伸びたように見えた実験では、そのグループの1日の合計量が多かったことが、差の正体だったのかもしれません。

2018年には、カナダのマクマスター大学などの研究者が、49件・1863人分の実験をまとめました。トレーニングを6週間以上続けた健康な成人が対象で、たんぱく質を足したグループは、筋力も除脂肪量(筋肉など、脂肪以外の体の重さ)も、足さなかったグループより伸びました。ただし、除脂肪量の増え方は小さいものでした。また、1日の合計量が体重1kgあたり約1.6g(後で紹介する目安の幅、1.4〜2.0gの中ほどです)を超えると、除脂肪量はそれ以上増えませんでした。[2]

ISSN(国際スポーツ栄養学会)も2017年に見解を出しています。運動の前でも後でもたんぱく質の効果は得られること、運動による筋肉への効果は少なくとも24時間は続くが、時間がたつと弱まることをあげています。飲む時間は、人の飲みやすさで決めてよいという立場です。この見解の著者には、サプリメント会社に所属する人も含まれています。[3]

根拠がある部分と、無い部分

根拠があるのは、次の3つです。

  • 筋肥大は、飲む時刻より1日の合計量のほうが、差をよく説明していた[1]
  • トレーニングを続けている人が、たんぱく質を足すと、筋力も除脂肪量も伸びる[2]
  • 運動の前でも後でも、効果は得られる[3]

一方、「30分以内に飲まないと損をする」という部分は、根拠が出ていません。研究では、前後1時間以内に飲むことの強みは見えませんでした。

研究者たちは、筋肉がたんぱく質を取り込みやすい時間があるとしても、それは前後1時間より長いだろうと述べています。[1] 30分と1時間を分けて比べたわけではありませんが、1時間以内でも差が見えなかった以上、30分を過ぎたら無駄になると考える理由はありません。

直後に飲んで悪いわけではありません。ただ、「30分を過ぎたら無駄になる」わけではない、ということです。

いま言えること

ここからは、研究と指針をもとに、目的や状況ごとの取り方を考えます。

筋肉を大きくしたい人(運動習慣のある人)

ISSN は、運動習慣のある人が筋肉を増やす・保つために、1日に体重1kgあたり1.4〜2.0gのたんぱく質を取れば、多くの人には十分としています。[3] 体重60kgなら、計算すると84〜120gです。この目安は運動習慣のある人向けで、後で書く65歳以上の目安とは別です。

まず、この量を食事で取れているかを確かめてください。1日の合計量が同じなら、肉・魚・卵・大豆製品・乳製品のどれから取ってもかまいません。足りない分を、飲み物で手軽に補うのがプロテインの使い方です。

1回の量と回数が気になる人

「たんぱく質は1回に30gくらいしか吸収できない」とも、よく言われます。これは誤解です。もとになったのは、筋肉を作る反応が20〜25gほどで頭打ちになる、という実験で、吸収の上限の話ではありません。[6]

その頭打ちも、いまは見直されています。2023年、オランダのマーストリヒト大学の研究者が、運動習慣のある健康な若い男性36人で、運動のあとに25gと100gを取った場合を比べました。100gのほうが、筋肉を作る反応が大きく、12時間以上続きました。[7] 一度に多めに取っても、無駄になるわけではありません。

ISSN は、1回に取る量の目安を体重1kgあたり0.25g(体重60kgなら約15g)、または20〜40gとし、3〜4時間おきに分けるのがよいとしています。[3]

ただ、これは1日の合計量が足りたうえで、さらに上を目指すための工夫です。研究で差をよく説明していたのは、1日の合計量でした。[1] 毎回きっちり小分けにしなくても大丈夫です。たんぱく質が夕食に偏りがちな人が、朝食か昼食に1品足すくらいで十分です。

時間がなくて、トレーニングのあとにすぐ飲めない人

気にしなくて大丈夫です。研究は、トレーニングの前後どちらでもよいと示しています。[1][3] 帰宅してから、食事で取れば十分です。量の目安は、前の「筋肉を大きくしたい人」の節を見てください。

朝食前など、空腹のままトレーニングする人

この場合だけは、運動後なるべく早めに取るほうがよいとされています。食事から時間があいた状態で運動すると、運動のあとも筋肉が分解されやすい状態が続くためです。

前の食事から3〜4時間以上あけて運動したときは、なるべく早く25g以上のたんぱく質を取ることが勧められています。[8] 30分を気にする必要はありませんが、朝食を後回しにしないようにしましょう。

65歳以上の人

年を取ると、たんぱく質を多めに取る必要があります。理由は、食べたたんぱく質に対して、筋肉を作る反応が鈍くなるからです。

カナダのトロント大学などの研究者が2015年に、健康な男性の実験データをまとめ直して比べました。筋肉を作る反応が頭打ちになるまでに要った1回の量は、平均22歳の人で体重1kgあたり約0.24g、平均71歳の人で約0.40gでした。[9] 若いころと同じ量では、筋肉を作る反応が上がりきらない、ということです。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」も、高齢者には多めの量を勧めています。フレイル(体が弱りやすい状態)やサルコペニア(筋肉が減る状態)を防ぐには、推奨量より多く取るのが望ましいという考えです。目安として、体重1kgあたり1.2g以上を取っている高齢者の例をあげています。[4]

体重50kgなら1日60g以上で、朝・昼・夕に分けると1回20gほどです。これは、上の研究で71歳の人の反応が頭打ちになった量(体重50kgなら約20g)とも合います。

30分以内かどうかを気にするより、3食それぞれにたんぱく質を入れることを考えてみてください。朝食が軽めの人は、卵や乳製品、納豆などを足すと量を確保しやすくなります。

腎臓の病気などで、たんぱく質を控えるよう言われている人

腎臓の働きが落ちる病気(慢性腎臓病)の人は、医師の判断でたんぱく質を控えるよう指導されることがあります。厚生労働省の指針も、個々の患者の状態を総合的に判断して、たんぱく質を制限する指導をすることが推奨されているとしています。[5] 量を増やす前に、主治医に相談してください。

無理のない範囲で行ってください。 食べ慣れない量を一度に増やすと、胃腸の調子を崩すことがあります。少しずつ増やし、体調に不安がある場合は、医師や管理栄養士に相談してください。

Summary

  1. 01運動後30分以内の「ゴールデンタイム」を逃すと損をする、という根拠は出ていない。
  2. 02筋肉を大きくする効果(筋肥大)で大切なのは、飲む時刻より1日の合計量。持ち上げる力(筋力)も、飲む時刻で差は出なかった。
  3. 03運動習慣のある人の1日の目安は、体重1kgあたり1.4〜2.0g。1日の合計量が足りていれば、プロテインは要らない。
  4. 04「1回に吸収できるのは30gくらいまで」は誤解。一度に多めに取っても無駄にはならない。
  5. 05飲むタイミングは、運動の前でも後でもよい。続けやすい時間でよい。
  6. 06年を取ると、筋肉を作る反応が鈍くなるため、たんぱく質は多めに必要。65歳以上は、体重1kgあたり1.2g以上が望ましいと国の指針にある。腎臓の病気でたんぱく質を控えるよう言われている人は、主治医に相談してから。

References出典・参考

  1. [1]Schoenfeld BJ, Aragon AA, Krieger JW. The effect of protein timing on muscle strength and hypertrophy: a meta-analysis. J Int Soc Sports Nutr. 2013;10:53.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  2. [2]Morton RW, et al. A systematic review, meta-analysis and meta-regression of the effect of protein supplementation on resistance training-induced gains in muscle mass and strength in healthy adults. Br J Sports Med. 2018;52(6):376-384.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  3. [3]Jäger R, et al. International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017;14:20.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  4. [4]厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」高齢者の章mhlw.go.jp
  5. [5]厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」慢性腎臓病(CKD)の章mhlw.go.jp
  6. [6]Schoenfeld BJ, Aragon AA. How much protein can the body use in a single meal for muscle-building? Implications for daily protein distribution. J Int Soc Sports Nutr. 2018;15:10.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  7. [7]Trommelen J, et al. The anabolic response to protein ingestion during recovery from exercise has no upper limit in magnitude and duration in vivo in humans. Cell Rep Med. 2023;4(12):101324.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  8. [8]Aragon AA, Schoenfeld BJ. Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window? J Int Soc Sports Nutr. 2013;10(1):5.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
  9. [9]Moore DR, Churchward-Venne TA, Witard O, et al. Protein ingestion to stimulate myofibrillar protein synthesis requires greater relative protein intakes in healthy older versus younger men. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2015;70(1):57-62.pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

この記事は、上記の研究をもとに構成しています。 引用・要約は必要最小限とし、詳細は原典をご確認ください。